私が勤めている、時空管理局の小規模基地の一つ……ある日の出来事でした。そうです……

うちの基地の隊長クラスの方の一人が、突然、怒り狂って、うちの基地司令に

殺傷設定にした砲撃魔法で襲いかかったのです!

後でわかったことなのですが、そもそもの事の起こりは

その隊長クラスの御方と基地司令が協力しあって、賄賂や騙し取りなどで内密に溜めた金

5000万円を基地司令が独り占めにした。それで、裏切られた例の隊長クラスの御方……

うちの基地内では、魔導師として、かなり腕っ節の良い御方だったのですが

その御方が鶏冠に血が上って、ついにプッツン。

大きな声じゃ言えませんが、私が思うに一番悪いのは、うちの基地司令。

御粗末とも何とも御話になりゃしません。迷惑したのは私達、末端局員達で

生憎の昼飯時……御膳はヒックリ返る、コップは飛び散る、砲撃や斬撃は飛び交う……

いや、もう大変な大騒ぎ。

 

本来ならば、私を含めた現場に居合わせた人全員が、管理局の一員として

その隊長クラスの御方を御止めして、基地司令を御護りして

事を一旦収めるべきだったんでしょうが……

こんな時には時空管理局員だって、私も含めて、我が身が一番可愛いわけで……

他人を庇って、たった一つしかない自分の命を落としたかないし、

こんな時にも、社会的保身に関しては何故か冷静に頭が回ってしまうものでして

基地司令に襲いかかっている隊長クラスの御方も一応は上官である以上は

そこそこの権限を有している御方なので、下手に手を出したら

たとえ、この場を生き残れたとしても、後で、直接的にせよ間接的にせよ、何らかの

報復を受けることになるかもしれないのが怖いので、たとえ成す術があったとしても

下手に成すのは下策だと、皆そう判断されたようで、とにかく私も頭を抱えて逃げ回り、

その周囲では、他の局員達も、相手が日頃から親しく親友やら恋仲やらである筈の相手に

対しても、そんなことなど一切おかまいなしに

押しのけ合うは、突き飛ばし合うは、盾にし合うは、

転んだ相手を盛大に踏みつけたとしても、そんなこと知ったこっちゃないとばかりに

自分だけでも助かりたいがために、我先にと逃げ出そうとする始末。酷い時には

小規模短距離砲撃魔法で前の人達を蹴散らして逃げ出そうとした人も何人かいましたなぁ。

一応、必死になんとか止めようとした立派な御方も何人かいたようですが

その方達全員が揃って、例の隊長クラスの御方に返り討ちにされて

多少は運の良かったのであろう御方は後で病院送りに、運の悪かったであろう御方は

あえなくアノ世逝きになってしまってましたよ。

 

それで、中でも最も悲惨だったのが私と同じ部署に勤めている曹長殿で……

逃げ惑う内にトイレに逃げ込んだのですが、自分だけ隠れて後から続いて逃げてきた人を

中に入れようとしなかったため、閉めたドアをこじ開けて無理矢理入ってきた人達に

突き飛ばされて転んだのですが、それで顔面が和式便器の中に……ちなみに

少し前に理由あって、うちの支局内で断水させていたため、それが原因だと考えて

間違いないのでしょうが、その便器の中には物凄く太くて非常に長い硬そうなのが

タップリと……ま、逃げ込んだのが女子トイレで、うちの基地内の局員の男女の比率は

男女半々なのですが、うちの基地の女性局員達は、機動六課にも負けず劣らず

若くて美人でグラマラスなナイスバディ揃いだというのが不幸中の幸いだったのでしょうな。

 

それはそうと、基地内を逃げ惑ううちに、私と基地司令と隊長クラスの御方を含めた三人以外の

方達は、みんな部屋の外に逃げ出したようでして、どうやら逃げ遅れたのは私だけだったらしく

私も急いで、その部屋から逃げ出そうと出入り口の一つを開けようとしたのですが、

先に逃げ出した方達が、外から扉を押さえているらしく、扉が開きません。

基地司令も他の出入り口から逃げ出そうとしたそうなのですが、やっぱりそっちの扉も

外にいる局員達が押さえているようで開きません。

基地司令は扉に縋って情けない声で開けてくれるように外の局員達に懇願するのですが

外からは

「もう少し御辛抱を!!今すぐ助けを呼んで参りますッ!!それまでは御気を確かにッ!!」

という返事が返ってくるものの、扉は開けてもらえません。

っていうか、その返事の前に、外から

「開けても良いのかッ!?」

「馬鹿ッ!!中にいるんだぞ!!」

という会話が聞こえてきましたから、助けを呼んでくるとか言ってましたけど

ありゃ絶対に嘘ですな。

ちなみに、その直後、基地司令が逃げ出そうとした出入り口に

隊長クラスの御方の魔力刃が突き刺さりまして、基地司令はギリギリで避けれたのですが

出入り口に魔力刃が突き刺さった途端に、外から断末魔らしき悲鳴が聞こえたので

外の方達の何人かは、それで逝かされましたな、きっと。

基地司令はというと、泣き叫びながら

「俺が悪かった!!集めた金は約束どおり半分ずつ山分け……いや、もういっそ

 全部くれてやるからぁッ!!」

と命乞いをしたのですが、当の隊長クラスの御方はというと

「もう、遅いわぁあッ!!」

と、一蹴。基地司令は、部屋に取り残された私に駆け寄って私のことを盾にして

逃れようとしたのですが、私も巻き添えにされて死にたかないので、私の両肩を掴んだ

基地司令を咄嗟に突き飛ばします。

そして、基地司令が私に突き飛ばされて転んだところを狙っての、隊長クラスの御方の砲撃です。

基地司令は、あえなく両手首と両膝下を残して、それ以外は跡形も無く消し飛んでしまいました。

そうそう、基地司令が消し飛ばされた際に、壁にも大穴が開いたんですが

砲撃が止まった途端に、その穴の向こう側に床に落ちる手首やら頭やら内蔵やらが

一瞬だけ見えたんで、たぶん壁の向こう側にいた先に逃げ出した局員達も

何人か巻き込まれたんでしょうな。それで、基地司令を殺した隊長クラスの御方はというと

狂ったように薄ら笑いを浮かべつつ、私の方に歩み寄りながら自分のデバイスに魔力刃を

形成させて、その一振りで自分の首をスッ飛ばして自害なされたのです。

私はというと、落ちる生首をついキャッチしてしまいまして

ウッカリそれと目が合ってしまった時にゃ、心臓が止まるかと思いましたよ。

なお、私が隊長クラスの御方の生首を受け止めたのと同時に部屋中の出入り口全てが

外で扉を押さえていた局員達の重みに耐えれなくなってらしく、室内側に向けて

外にいた方達と一緒に一斉に倒れたのですが、丁度その一角に、私が驚いて投げ捨てた生首が

落ちたのですが、その近くにいた方々の驚きようも、相当凄まじかったですなぁ。

気持ちは大いにわかりますけど。

 

 

まぁ、ともかく……いや、もう、まったくの命拾いで……やれやれ助かったと

ホッと胸を撫で下ろしたんですが……ドッッコイ、トンデモナイ。

この騒ぎに輪をかけた災難が……私を待ち受けていたんです……。

この後、最後まで部屋に残ったのにも関わらず騒ぎを止めようとしなかったという罪状で

向こう半年間も給金を半分に減らされてしまったのです……。

自分で言うのも何ですが、他の方々が逃げ出すために他の局員と押しのけ合ったり

砲撃や斬撃で他の局員を蹴散らして逃げ出そうとしている中で、私ゃ、逃げ出そうとはしつつも

逃げ出すために、そこまで酷いことをした覚えもないですし、

おまけに、基地司令と私を部屋に閉じ込めた他の方々には特に何の御咎めもなく

処罰を課せられたのは、うちの基地で私一人だけだったんですよ!信じられますか!?

そうそう、先ほど話した、私と同じ部署の曹長殿なんですが、一応、顔は奇麗に洗ったものの

異臭を微妙に漂わせながら、歌舞伎の女役みたいな甲高い声で

処罰を申し渡された私に対して

「悔しい気持ちはわかりますが、これは御上の御裁きですから!!

 宮仕えは我慢が肝心ですよッ!!」

と、言ったんですよ。

ったく、何が我慢だ!俺一人だけコケにしやがって!!……やってらんねーや、もう!!

……あ、いや……これは失礼いたしました。つい興奮してしまして、本音がポロッと……